コラム一覧

『国際離婚(渉外離婚)事件の国際裁判管轄』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇国際離婚の増加
近時は,国際化に伴って外国人の方と結婚する,いわゆる国際結婚も増えてきています。しかしながら,国際結婚が増えるということは国際離婚(渉外離婚)も増えるということになります。「外国人と離婚したいけど相手が離婚に応じてくれない」「離婚は決まっているけど子供の親権に争いがある」「養育費の金額について協議がまとまらない」そんなときに,日本の裁判所を利用することができるでしょうか。

〇国際裁判管轄とは
国際裁判管轄とは,「その具体的事件について,どの国の裁判所が審理できるのか」という考え方です。裁判所は,その具体的事件を適切に解決するための公的機関であり,かなりの数の事件について利用されます。そのため,「A裁判所が甲事件を適切に解決できないのなら,甲事件のためにA裁判所を利用させるべきではない。甲事件では適切なB裁判所で審理させて,A裁判所では適切な乙事件に注力するのがよい。」と考えられたのですね。例えば,タイ人男性Aさんとイギリス人女性Bさん夫婦が離婚することになりましたが,結婚当初から別居時までフランスで住んでいたとします。タイ人男性Aさんが,たまたま2泊3日の旅行で来た日本の家庭裁判所で離婚調停を申立できるでしょうか。答えは「できない」です。裁判所に申立てを行った場合,今後,AさんもBさんもわざわざ日本に来なければなりません。それも2度3度と来ないといけないかもしれません。それでは申し立てを行ったAさんはともかく,Bさんにとっては費用面でも時間面でもかなりの負担になります。また,離婚についての証拠が日本には全くといっていいほどないでしょう。そうすると,日本の裁判所では原則として国際裁判管轄がないとして,Aさんの申立を却下することになるでしょう。

 

〇日本における離婚事件の国際裁判管轄は法律で決まっていない
日本における国際裁判管轄は,日本の法律で決めます。
民事訴訟法第3条の2~第3条の12までが,日本における国際裁判管轄を定めた規定です。しかしながら,これらの規定はいわゆる財産法(貸金返還請求事件や交通事故の損害賠償請求事件等です)についてのみ規定されたものなのです。離婚の訴え等については,人事訴訟法第29条1項によりこれらの規定は適用されないとされています。
では,離婚事件についての国際裁判管轄はどの法律で決められているのでしょうか。正解は,現状法律では決まっていない,です。裁判所は,現状では,法律ではなく,「条理」というものを基準に国際裁判管轄を考えています。条理とは,「法律が存在しない場合に基準とすべき物事の筋道」といわれており,いわば社会の法秩序においてその根底に流れている、法的価値判断のことをいいます。いわば,何が社会的正義にかなうかといった判断ですね。

〇離婚事件における条理・判例
離婚事件においては,「当事者の公平」が条理における重要な観点とされ,裁判官は,基本的には当事者の公平という観点から離婚における国際裁判管轄を定めています。
この点について,重要な二つの判例があります。
最高裁昭和39年3月25日民事判例集18巻3号486頁
「離婚の国際的裁判管轄権の有無を決定するにあたっても、被告の住所がわが国にあることを原則とすべきことは、訴訟手続上の正義の要求にも合致し、また、いわゆる跛行婚の発生を避けることにもなり、相当に理由のあることではある。しかし、他面、原告が遺棄された場合、被告が行方不明である場合その他これに準ずる場合においても、いたずらにこの原則に膠着し、被告の住所がわが国になければ、原告の住所がわが国に存していても、なお、わが国に離婚の国際的裁判管轄権が認められないとすることは、わが国に住所を有する外国人で、わが国の法律によっても離婚の請求権を有すべき者の身分関係に十分な保護を与えないこととなり(法例一六条但書参照)、国際私法生活における正義公平の理念にもとる結果を招来する」
【http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/103/053103_hanrei.pdf】
最高裁平成8年6月24日、民集第50巻第7号1451頁
「離婚請求訴訟においても、被告の住所は国際裁判管轄の有無を決定するに当たって考慮すべき重要な要素であり、被告が我が国に住所を有する場合に我が国の管轄が認められることは、当然というべきである。しかし、被告が我が国に住所を有しない場合であっても、原告の住所その他の要素から離婚請求と我が国との関連性が認められ、我が国の管轄を肯定すべき場合のあることは、否定し得ないところであり、どのような場合に我が国の管轄を肯定すべきかについては、・・・当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である。そして、管轄の有無の判断に当たっては、応訴を余儀なくされることによる被告の不利益に配慮すべきことはもちろんであるが、他方、原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程度をも考慮し、離婚を求める原告の権利の保護に欠けることのないよう留意しなければならない。」
【http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/065/057065_hanrei.pdf】
これらの判例をみると
①被告(応訴を余儀なくされる者)の住所地が国際裁判管轄の原則であるとしつつ,②原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程度をも考慮して,例外的に原告の住所地も国際裁判管轄として認められる場合がある。
というのが,現状,離婚事件における国際裁判管轄の考え方のようです。

〇まとめ
以上からすると,国際離婚(渉外離婚)事件について,日本での国際裁判管轄が認められるのは,
①被告(相手方)が日本に住所を有するとき
または,
②自分が日本に住所を有しており,かつ,遺棄された・相手の住所が不明・これらに準じる事情がある・(法律や戦争等が理由で)相手方が住んでいる国では裁判できないといった事情があるため,相手方の住所地でしか裁判管轄を認めないのは不公平であるとき
であるといえます。
もっとも,離婚事件等についての国際裁判管轄の規定がないのはおかしい,としてこれを法律で明確に決めようとする動きもあります。これが規定されれば,どんなときに日本の裁判所を利用できるか,かなりわかりやすくなるでしょう。
なお,離婚事件に付随する問題である,親権や養育費についての国際裁判管轄は,後日記載します。

弁護士 後藤 壮一

2018年02月20日

『義務者が自営業の場合の婚姻費用・養育費算定方法について』

こんにちは。弁護士の寺野朱美です。

〇婚姻費用、養育費の請求
配偶者が不貞を行っていたために離婚を考えているものの、今後の生活が心配で中々踏み切れないという方は多いのではないでしょうか。
そのような場合、たとえば離婚協議のために別居していている期間も配偶者に「婚姻費用」の分担を請求したり、離婚成立後に未成年の子を育てることになった場合には元配偶者に「養育費」を請求することができる場合があります。では、この婚姻費用や養育費は具体的にどのようにして算定するのでしょうか。

〇婚姻費用、養育費の算出方法
婚姻費用・養育費の算定については、「算定表」と呼ばれる表があって、それによっておよその金額が算出できるということを見聞きしたことがある方もいらっしゃるかも知れません。算定表とは以下の様なものです。

算定表は、東京・大阪養育費等研究会という裁判官・調査官らで構成された研究会が、判例タイムズという法曹向けの雑誌において発表した『簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-』(判例タイムズ1111号285頁~315頁)において、それまで算定が複雑で時間がかかってしまっていた婚姻費用・養育費をより簡易迅速に算定し、未成熟子の養育費が早期に確保されることを目的に、実務での定着を期待して提唱されたものです。
算定表には何種類かあり、右上にどのような場合に使用する表なのか(婚姻費用なのか養育費なのか、子は何人いるのか)が明記されています。そこで、まずは家族構成等から適切な算定表を選ぶことから始めます。その上で、権利者(婚姻費用や養育費をもらう立場の人)の年収を表の横軸から選び、義務者(婚姻費用や養育費を請求支払う立場の人)の年収を表の縦軸から選び、二つの軸が交差する点に記載されている金額を婚姻費用・養育費の目安とするのです。
たとえば、上記の表は0~14歳の子が1人のみの場合の養育費の表ですが、仮に権利者が給与所得者で年収が150万円程度、義務者が給与所得者で年収が400万円程度の場合、養育費は毎月2万円~4万円の間ということになります。
算定表はあくまでも簡易な算定方法であるため、金額は幅のある記載になっています。しかし、実際の交渉や調停の中でも、算定表の範囲内の金額で解決することが多いのも事実です。示談や調停の話し合いによっては解決することができず、審判や訴訟に移行した場合には、より具体的な算定方法も存在しますが、これは多少複雑でテクニカルな算定式になるのでここでは割愛します。
なお、算定表は、裁判所のHP上にPDFドキュメントが公開されています。
【http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf

〇義務者が自営業者の場合
さて、本題ですが、自営業者の方と結婚されているご相談者様からは「相手の本当の収入がよく分からない」「税務申告の際は沢山経費を計上しているので、相手の年収がとても低いことになってしまい養育費をほとんどもらえないのではないか」というご心配の声をお聞きすることがあります。このため、義務者が自営業者であった場合に、その「年収」をどのように考えるかが問題になるのです。
では、上記の判例タイムズ1111号の記事において、自営業者の年収がどのように考えられているかを確認してみましょう。
判例タイムズ1111号の記事においては、自営業者について「確定申告書の課税される所得金額」が総収入に当たると説明がされています(P.291)。しかし同時に、「この『課税される所得金額』は、税法上、種々の観点から控除がされた結果であり、その金額をそのまま当然に総収入と考えることが相当ではない場合がある。このような場合には、税法上控除されたもののうち、現実に支出されていない費用(例えば、青色申告控除、支払がされていない専従者給与など)を『課税される所得金額』に加算して総収入を認定する必要がある。」(P.292)との注記が付されています。つまり、単純に確定申告書の課税される所得金額を年収として認定するわけではないのです。

 

さらに、同記事から約3年後、同じく判例タイムズに、当時東京家庭裁判所裁判官であった岡健太郎判事の記事『養育費・婚姻費用算定表の運用上の諸問題』が発表されました(判例タイムズ1209号4頁~11頁)。この記事は、判例タイムズ1111号記事発表後の3年間、実務での運用を通して現れてきた問題について一定の見解を示したもので、自営業者の年収の認定方法についてもより具体的な見解が示されていますので、以下まとめたものをご紹介します。

*****
自営業者の場合、下記項目は、税務申告上は控除されていますが、婚姻費用・養育費の認定においては控除せずに加算します。

 現実に支出されていないもの
「雑損控除」、「寡婦、寡婦控除」、「勤労学生、障害者控除」、「配偶者控除」、「配偶者特別控除」、「扶養控除」、「基礎控除」「青色申告特別控除額」及び現実に支出されていない「専従者給与額の合計額」は、税法上の控除項目であり現実の支出を伴わないので、「課税される所得金額」に加算
 算定表において既に考慮されているもの
「医療費控除」「生命保険料控除」及び「損害保険料控除」については、算定表において収入額に応じた標準的な保健医療費及び保険掛金が特別経費として考慮されているため、これらも「課税される所得金額」に加算
 養育費・婚姻費用の支払いに優先しないもの
「小規模企業共済等掛金控除」及び「寄付金控除」については、これらの支出が養育費・婚姻費用の支払いに優先するものとは考えられないため、「課税される所得金額」に加算
*****

このように、税務申告上は控除されているかなり多くの項目が、自営業者の婚姻費用・養育費の算定においては加算されるべきものであること分かります。これらをきっちり加算することにより、義務者の年収が不当に少額に認定されることを防ぐことが可能になります。

〇まとめ
以上のとおり、自営業者の年収は、単に確定申告書上の「課税される所得金額」で認定するのではなく、現実に支出されていない費用、算定表において既に考慮されている費用、養育費・婚姻費用に優先しない費用などを加算した上で年収を認定することになります。相手方が自営業者の場合に、このような加算をせずに計算をしてしまうと、実際に請求可能な金額よりも少額な金額が算出されてしまい不利になることも考えられます。
婚姻費用や養育費の請求は個人でも可能ですが、以上のようにテクニカルな計算や知識に基づいた主張・立証が必要な場合もありますので、是非弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士 寺野 朱美

2018年03月26日

『民法改正による交通事故実務への影響』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇民法の改正
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが,民法がなんと約120年ぶりに大改正されます。
法律とは紛争の予防・解決のためのルールですので,そのときどきの時代に合った紛争の予防方法・解決方法の考え方を基に制定・改正を行うのです。そうすると,約120年前の明治時代が始まった頃と現代では考え方が変わった部分がたくさんありますので,法律が変わるのも当然といえるかもしれませんね。
では,今回の民法改正によって,交通事故の実務にはどのような影響があるのでしょうか。

〇法定利率の変化(新法第404条2項)
現行法では,法定利率(当事者があらかじめ約束していない場合の利率)が5%となっていましたが,これがまずは3%に下がります。その後、3年毎に変動していく可能性はありますが、しばらくは3%になります。
「3%に下がるならもらえる金額も減るんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかしながら,実は,賠償金額が増える可能性もあるのです。
(1)逸失利益の増額
☆逸失利益とは
それがこの「逸失利益」に対する賠償金です。
逸失利益とは,「後遺障害が残存したために,今後もらえる賃金等が減少するという損害」をいいます。
例えば、Aさんは、会社員で年収1000万円、47歳で事故被害者になりましたが、事故によって今までの80%の仕事しかできなくなったとします。仕事の出来が80%の人に対して勤務先の会社は今まで通りの給料を支払わないのが通常ですので,Aさんの給料は事故がなかった場合に比べて20%の200万円減ってしまいます。そうすると、加害者は、今後被害者が退職するであろう年齢までの20%下がった賃金200万円を賠償する必要があります。
裁判例では67歳まで働けるとされることが多いので、ここでもそうします。そうすると、Aさんは、合計で200万円×20年(67-47)=4000万円を賠償して貰う必要があるのですね。
☆逸失利益の支払い方法
このとき,毎年,200万円を払ってもらう方法もありますが,通常一括で支払いを受けます。
しかしながら、ここで問題が一つあります。それは、今支払ってもらう200万円と20年後に支払ってもらう200万円は同じ価値ではないということです。
今200万円をもらうと、利息がつくので、20年後には200万円を上回っているでしょう。そのときの利率は、法定利率を前提とすることになります。
従来の法律では、利率が5%でしたので、現在の200万円は、20年後には
200万円×1.05×1.05×・・・・・×1.05(20回)=約530万円になります。
逆にいうと、従来の法律では、20年後の200万円は、現在では、
200万円÷1.05÷1.05÷・・・・・÷1.05(20回)=約79万円に相当します。
そうすると、Aさんが一括で支払いを受ける場合、4000万円ではなく、この利息分を計算して、トータルで4000万円相当額になる金額の支払いを受けることになります。
これを「中間利息控除」といいます。

 

☆計算結果
では、法定利率が変わることによって、この中間利息控除の計算はどう変わるのでしょうか。
上述のように、20年後の200万円は、現在では、約79万円に相当しました。
これが、新法(法定利率3%)では、20年後の200万円は、現在では
200万円÷1.03÷1.03÷・・・・・÷1.03(20回)=約110万円に相当します。
したがって、従来の法律では、20年後の逸失利益として、約79万円しか支払ってもらえなかったのが、法定利率が変わることで、約110万円の支払いが受けられるのですね。
このように、法定利率が下がることで、中間利息控除される金額が減少し、逸失利益として今支払って貰える金額は増額するのです。
なお、Aさんの場合、この計算を19年後の分、18年後の分・・・・1年後の分、全てにおいて行い、合算して逸失利益の総額を出しますが、全年の分について、逸失利益は増額するので、逸失利益の合計額も増額します。弁護士は通常、この計算方法をまとめた、係数(ライプニッツ係数)を使用します。

 

  また、中間利息控除について、従前より「いつから中間利息を 控除するのか」議論がなされており、いわゆる固定時説・事故時説等、裁判例でも別れています。もっとも、この点については、今回の改正でも規定されておりませんので、議論の余地は残るでしょう。
(2)遅延損害金の減額
交通事故のような不法行為の場合、その賠償は、事故当日に行うものとされています。したがって、当日に全額払えない(通常そうだと思いますが)場合、支払いが終了するまでの分の遅延損害金を支払わなくてはなりません。
その利率も法定利率によって決められますので、従来の5%から3%になった分、遅延損害金は減額する傾向になると思われます。
(3)変動利率はどう影響するか
上で書きましたように、3%という利率は今後変動していく可能性があります。
では、いつの時点の利率で計算すればよいでしょうか。
この点については、(1)の逸失利益・中間控除の計算については、「損害賠償請求権が発生した時点での法定利率」になります。そして、交通事故の不法行為による損害賠償請求権が発生した時点とは、事故時を指すと理解されています。したがって、事故があった日の法定利率に基づいて計算されます。
また、(2)の遅延損害金については、「債務者が遅滞の責任を負った時点の法定利率」になります。ところが、上記のように交通事故の不法行為による損害賠償請求権は事故当日に支払いを行うものとされ、当日から遅滞の責任を負います。そのため、遅延損害金の計算も事故があった日の法定利率に基づいてなされます。
どちらも、「交通事故日の法定利率」に基づいて計算されるのですね。

〇人身損害における消滅時効の期間延長(新法第724条の2)
現行法では,人身損害についても物的損害についても消滅時効は,被害者等が損害及び加害者を知った時から3年間とされています。
これが,人身損害では5年間に延長されます。
これまで,事故に遭ってしまったが仕事等が忙しく,つい損害賠償請求を後回しにしてしまったために,3年間の消滅時効が成立してしまい,賠償が受けられなかったという被害者の方も損害賠償の機会が増えるでしょう。

〇物的損害の相殺可能(新法第509条)
従来の法律では、人的損害、物的損害にかかわらず、交通事故のような不法行為の場合、相殺ができないこととされています(法509条)。
しかし、新法では、人的損害については相殺が禁止されていますが、物的損害については相殺が解禁されるようです。
もっとも、禁止されていたのは合意に基づかない一方当事者からの相殺であり、これまでも実務的には双方の合意による相殺を行うこともありましたので、実務的な影響については大きくはないと思われます。

〇定型約款についての規定(新法第548条の2
相手方への損害賠償請求ではあまり問題になりませんが、交通事故被害者が契約している任意保険会社との契約内容については、通常定型約款にて詳細が規定されています。
これまで、定型約款については、その有効性が争われる場合もありました。
新法では、この点を明文化し、どのような場合に定型約款が有効になるかを規定しています。
具体的には、①「定型約款を契約内容とする旨の合意」、②「①についてあらかじめ相手方に表示すること」、によって定型約款が契約の内容となります。
その上で、「基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては合意しなかったもの」とみなされますので、有効とはなりません。
更に、約款の変更については、①「相手方の一般的利益に適合するとき」、または、②「契約目的に反せず、かつ、変更の必要性・相当性を充たし、なおかつ、約款に変更することがある旨の規定があるとき」
、には相手方の承諾なく可能とされました。有効になるためには、この上に、変更についての周知が必要になります。
こちらについても、今まで実務的に求められていた事項を明文化したものですが、かかる明文化によって、保険会社の説明等がさらに丁寧になるものと思われます。

〇まとめ
いかがでしょうか。
特に,後遺障害が残存してしまった被害者にとって,逸失利益の増加は賠償金額が大きく変わることになりそうです。
適切な賠償を受けるためには,しっかり計算を行う必要がありますね。

弁護士 後藤 壮一

2018年04月14日

弁護士寺野が弁護士ドットコムニュースの取材を受けました

 

弊所に所属している弁護士寺野が、弁護士ドットコムニュースの取材を受けました。

夫が不貞している上に、不貞相手に対して結婚詐欺を行っているという案件について、ご回答させていただきました。

掲載記事はこちらです。

「独身と偽り『カネはまだ?』不倫相手にせびる夫…妻も巻き込まれる危険は?」https://www.bengo4.com/c_1009/n_10534/
(同記事はYahoo!ニュースなどにも掲載されています。)

2019年12月23日

弁護士寺野が弁護士ドットコムニュースの取材を受けました

弊所に所属している弁護士寺野が、弁護士ドットコムニュースの取材を受けました。
恋人と同棲を解消した際に荷物を置きっぱなしにされた場合どうすればよいのかについて、ご回答させていただきました。掲載記事はこちらです。

「『元カレの荷物』勝手に処分はNG、“20年”待たないとダメって本当かよ?」https://www.bengo4.com/c_3/n_11548/
(同記事はYahoo!ニュースなどにも掲載されています。)

2020年08月06日

『遺言の種類について』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇「終活」とは
近時では「終活」という言葉もよく耳にしますが、ご存じですか。これは「人生の終わりのための活動」の略語です。すなわち、「人生の最期を迎えるにあたって、残される人々のために様々な準備を行うこと」を意味します。
身の回りの整理、葬儀や墓の準備等、終活には様々なものがありますが、自身の意思を明確にし、死後の紛争を防止するために最も有効かつ重要なのは遺言書の作成でしょう。

今回は遺言にはどのような種類があるのかについてご説明します。

〇「普通方式遺言」と「特別方式遺言」
遺言書を作成する際には、法律によって定められた方式を充たす必要が生じます。法律によって定められた方式を充たさない遺言は無効となります。

現在日本で認められている遺言は、普通に生活する際に作成する「普通方式遺言」と特殊な状況下でのみ作成が認められている「特別方式遺言」の大きく2種類に分けられます。

〇普通方式遺言の種類
「普通方式遺言」には3種類あります。
それは、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」です。

「公正証書遺言」とは、証人2名の立会いの下、遺言内容を公証人が確認の上で作成し、かつ、原本を公証役場で保管してもらう遺言です。(公正証書遺言の特徴はこちら。作成方法はこちら。周知方法・調査方法はこちら。)

「自筆証書遺言」とは、遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書(令和2年の法改正で財産目録については自署要件が緩和されました)し、押印したものを封印して作成する遺言です。(自筆証書遺言の特徴・作成方法はこちら。保管方法についてはこちら。)

「秘密証書遺言」は、遺言者が記載した遺言本文に自署して押印したものを封印し、公証人及び証人立会いの下で公証役場にて保管してもらう遺言です。
制度としては現在もありますが、あまり使用されることはありません。


〇特別方式遺言の種類
「特別方式遺言」は、大きく「危急時遺言」「隔絶地遺言」の2つに分かれます。

それらがさらに2つに分かれますので、最終的に「特別方式遺言」には、「一般危急時遺言」「難船危急時遺言」「一般隔絶地遺言」「船舶隔絶地遺言」の4種類があることになります。

それぞれがどのような要件を満たす必要があるのかについて、詳細はこちらをご覧ください。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
終活として遺言書を作成する場合は「普通方式遺言」から選択することが多いと思います。
もっとも、思いがけず死の危機に直面した場合でも自身の最期の意思を残す方法がある、ということは覚えていても損はないかもしれません。
次回以降で、それぞれの遺言を詳細に説明いたしますので、そちらもご覧ください。

弁護士 後藤 壮一

2023年07月31日

『公正証書遺言の特徴』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇「終活」とは
近時では「終活」という言葉もよく耳にしますが、ご存じですか。これは「人生の終わりのための活動」の略語です。すなわち、「人生の最期を迎えるにあたって、残される人々のために様々な準備を行うこと」を意味します。
身の回りの整理、葬儀や墓の準備等、終活には様々なものがありますが、今回はその中でも最も重要な遺言の一部についてご説明します。

〇遺言の種類
日本で行われる一般的な遺言には大きく3種類あります。
それは、「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」です。
・「自筆証書遺言」とは、遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書(令和2年の法改正で財産目録については自署要件が緩和されました)し、押印したものを封印して作成する遺言です。
・「秘密証書遺言」は、遺言者が記載した遺言本文に自署して押印したものを封印し、公証人及び証人立会いの下で公証役場にて保管してもらう遺言です。
・「公正証書遺言」とは、証人2名の立会いの下、遺言内容を公証人が確認の上で作成し、かつ、原本を公証役場で保管してもらう遺言です。

実は上記3種類以外にも、「危急時遺言」「隔絶地遺言」という特別な方式の遺言がありますが、上記の遺言ができない特殊な状況下でのみ認められるものですので、「終活」としての遺言作成には向かないですね。


〇公正証書遺言の特徴
今回は、これらの中で「公正証書遺言」について、説明いたします。(自筆証書遺言についてはこちら
公正証書遺言の特徴はなんといっても、「遺言の内容や遺言意思を、公証人と証人2名が確認すること」にあります。

どうしてこのような方式が重要なのでしょうか。
それは、「遺言の有効性が争われる可能性が最も低い」からです。

遺言の内容が相続人や関係者全員が納得するものであれば問題はないのですが、多くの遺言書は全員が納得できるものとなりません。関係者のうち一人でも内容に納得しない人がいる場合には、「遺言無効確認請求訴訟」等がなされる可能性があります。
その場合に、「遺言の形式」や「遺言作成時の判断能力」といった遺言の有効性等が争われます。
残された人々の紛争防止のためにせっかく作成したのに、遺言が原因で紛争が生じるのでは本末転倒ですよね。

そこで、公証人や証人2名が立ち会うことで、遺言の内容が間違いなく、遺言時の状況等が問題ないと証明してもらうことができます。また、作成後、原本を公証役場で保管しますので、改ざんのおそれもありません。
特に、公証人は、遺言者の判断能力に問題があると判断した際には、遺言の作成を拒否しまたは診断書等の提出を求めることができます。
こうすることで、遺言内容に納得したくない相続人がいても、遺言無効を主張する根拠がなくなりますので、訴訟になることを回避できます。

また、法務局における遺言書保管制度を利用しない場合の自筆証書遺言や秘密証書遺言では、遺言書の開封には家庭裁判所による検認が必須となります。そのため、相続人は遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、遺言書の検認の申し立てを行い、家庭裁判所の指定する期日に出頭した上で検認してもらい、検認済み証明書の申請等をしなければなりません。
これに対して、公正証書遺言では、公証人が遺言書を作成することからそのような手続きは不要となります。

〇公正証書遺言のデメリット
このように、とてもメリットの多い公正証書遺言ですが、自筆証書遺言等に比べて「費用がかかる」「作成に手間がかかる」というデメリットもあります。

しかしながら、遺言無効確認訴訟等と比べると費用・手間ともにはるかに小さいものです。

自身の死後に遺族の紛争を防止する、という終活や遺言の目的から考えると、他の遺言方式で死後に遺言無効確認訴訟等で遺族が多大な費用や手間がかかるよりも、自身の生存中により小さい費用と手間で公正証書遺言を作成する方がよい場合が多いと思います。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、終活の一手段として遺言のうち「公正証書遺言」について概要をご説明いたしました。次回以降では、公正証書遺言の作成方法及び知らせ方・調査方法についてご説明する予定です。

遺言の作成は個人でも可能ですし、ご自身の意思を伝えることも可能ですが、作成方法が誤っていたり、内容が法律上無効になる可能性がある、そもそも遺言書を見つけてもらえない、といった可能性もあります。残された遺族の紛争をできるだけ確実に予防するためにも、遺言作成について是非弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士 後藤 壮一

2023年08月01日

『公正証書遺言の作成方法』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇はじめに
前回、「公正証書遺言」の特徴について、ご説明しました(前回のコラムはこちら)。
今回は、「公正証書遺言」の作成方法について、ご説明いたします。

〇公正証書遺言の作成方法
「公正証書遺言」とは、証人2名の立会いの下、遺言内容を公証人が確認の上で作成し、かつ、原本を公証役場で保管してもらう遺言です。


公正証書遺言の作成は基本的に以下の流れで行います。

①資料の収集と遺産・相続人の確定
 遺言の最も大きな役割は、遺産の分配です。そのため、ご自身の遺産としてどのようなものがあるか、それぞれ金額がどれくらいか、を把握します。
 遺産は、相続人以外の者にも譲渡できますが、その場合、相続人に遺留分が生じる可能性があります。そのため、ご自身の相続人がだれか、も把握しましょう。
 これらの際に戸籍や通帳等の資料も集め、できるだけ正確に遺産や相続人を把握しましょう。お一人で資料を収集する方法がわからない、大変だという場合は弁護士にご相談ください。

②遺言の内容案の確定
 把握した遺産や相続人を基に、どのような遺言を行うか、内容を考えます。細かい文言等は公証人から教えてもらえますので、まずはご自身の思うままに遺言内容を考えましょう。
 ただし、公証人は、遺言者の意思を残すのみですので、当該内容が法的に有効か、他に別途紛争を生じさせる余地がないか等は、判断しません。これらについて不安がある場合には、弁護士にご相談ください。

③証人の依頼
 公正証書遺言の作成には、証人が2名必要となります。
 証人は、ご自身で依頼されることも可能ですし、公証役場で証人を紹介してもらうこともできます。
 だだし、証人を紹介してもらった際には、1名あたり10,000円程度の費用が必要です(金額は公証役場によって異なります)。

④公証役場への原案や資料提出、打合せ
 遺言内容の原案が完成し、資料がそろいましたら、公証役場に連絡を入れます。基本的には、どの公証役場にしなければならないといった制約はありません。また、公証人を指名することもできますし、役場に決めてもらうこともできます。
 すぐに公証人が決まりますので、当該公証人の指示に従って、資料や遺言内容の原案を提出してください。
 その後、公証人と打ち合わせを行い、公証人で正式な条項を作成していきます。
 健康上の理由等で公証役場に出向けないとき等は、公証人に自宅や病院へ出張してもらって打ち合わせを行うこともできます(別途出張費用は必要です)。

⑤公正証書遺言の作成当日
 作成当日は、遺言者と証人2名が公証役場に赴きます。その際、本人確認書類(遺言者、証人双方)と実印、事前に公証人から伝えられる金額を持参してください。
 通常、打ち合わせで内容を把握していますので、公証人があらかじめ公正証書遺言案と写しを作成して待っています。当該案を、公証人が遺言者と証人の前で読み上げますので、遺言者は内容に間違いがないかしっかり確認してください。
 内容に間違いがない場合、原本分に遺言者と証人が署名押印します。
 公証人が署名押印し、当該公正証書遺言が方式に従って作成されたことを付記します。これで公正証書遺言が完成です。
 その後、公正証書遺言の正本と謄本が作成され、遺言者に渡されます。原本は、公証役場で保管されますが、正本と謄本はしっかり保管してください。
 最後に、作成費用を精算して終了となります。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、「公正証書遺言」の作成方法についてご説明いたしました。
お一人で資料を集め、原案を作成し、証人を確保して、公証人とやり取りを行うのは大変かもしれません。公正証書遺言の作成について是非弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士 後藤 壮一

2023年08月02日

『公正証書遺言の周知方法・調査方法について』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇はじめに
前回、「公正証書遺言」の作成方法について、ご説明しました(前回のコラムはこちら)。
今回は、「公正証書遺言」の周知方法・調査方法について、ご説明いたします。

〇遺言者による公正証書遺言の周知方法
公正証書遺言はその内容や効力が争われにくく、死後の遺族の紛争の防止に役立ちます。そのため、「終活」においては、公正証書遺言の作成はとても重要な活動になります。

しかし、せっかく作成した公正証書遺言も遺族に見てもらわない限りは意味がありません。
したがって、公正証書遺言を作成した場合には、しかるべき人に「〇〇の公証役場に公正証書遺言がある。」ということはしっかり伝えてください。遺言の内容を実現する「遺言執行者」を指名した場合には当該遺言執行者であったり、遺贈の相手方や相続人全員に伝えるのが望ましいですね。

また、公正証書遺言があることを伝えたとしても、「遺言者の生存中に公正証書遺言の内容を確認できるのは遺言者のみ」という決まりがあります。そのため、公正証書遺言の存在を伝えたとしても、遺言者の生存中は原則として遺言の内容を知られることはありませんので、ご安心ください。

内容を知られてもよい人には、公正証書遺言の謄本を預けることも有効です。そうすることで、公証役場の場所や作成日等を把握してもらいやすくなります。


〇相続人等による公正証書遺言の調査方法
逆に、被相続人が公正証書遺言を残しているかどうか、相続人等が調査するためには、2つの方法があります。

まずは、被相続人のご自宅等で公正証書遺言の正本や謄本を探す方法です。公正証書遺言は、作成時に正本と謄本が1通ずつ遺言者に渡されますので、当該正本または謄本を遺言者が保管している可能性あります。

2つめは、公証役場にある「遺言検索システム」を利用する方法です。
「遺言検索システム」を利用すれば、公正証書遺言の有無や、公正証書遺言がある場合には、「作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等」がわかります。

「遺言検索システム」は全国規模で公正証書遺言を管理していますので、どこの公証役場で検索しても、全国どこの公証役場に公正証書遺言があるかどうかがわかります。ただし、昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言のみが検索対象なので、それ以前に公正証書遺言を作成していた場合には、検索できないこともあります。

遺言検索システムを利用するためには、以下の資料を持参して、公証役場に行きます。
・被相続人の死亡記載のある資料(除籍謄本や住民票の除票等)
・「法律上の利害関係」があることを証明する資料(相続人であることがわかる戸籍謄本や)
・請求人の本人確認資料
・(代理人による請求の場合)委任状と印鑑証明書
なお、遺言検索システムの利用料は現在のところ無料とされています。

もっとも、遺言検索システムでは、公正証書遺言の有無と保管されている場所としかわかりません。公正証書遺言の内容を確認するためには、原則として作成した公証役場にて閲覧・謄写の手続きが必要となります。
ある程度公正証書遺言が保管されている場所の目途が立っている場合、当該公証役場で検索し、当該公証役場に保管されていればその場で謄写等の請求もできます。
ただし、平成31年4月1日からは、遠隔地の公証役場が保管する遺言の正本謄本を郵送で取得することができるようになりました。公正証書遺言が作成された公証役場が遠隔地の場合は、最寄りの公証役場で郵送のお手続きしてください。

このように、相続人等による調査もできますが、やはり公正証書遺言が保管されている公証役場をあらかじめ伝えておくことで、遺族の手間が大いに省かれます。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、「公正証書遺言」の周知方法・調査方法についてご説明いたしました。
遺言は、被相続人の意思を残す重要な手段です。被相続人が生前にしっかり周知するか、相続人がしっかり調査して、相続人が内容を知れるようにしましょう。

弁護士 後藤 壮一

2023年08月02日

『自筆証書遺言の特徴・作成方法について』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇自筆証書遺言
前回まで、遺言の1つである「公正証書遺言」について、ご説明しました。(公正証書遺言の特徴はこちら。作成方法はこちら。)
今回は、「自筆証書遺言」の特徴・作成方法について、ご説明いたします。

〇自筆証書遺言の特徴
「自筆証書遺言」とは、遺言者が、遺言の全文・日付・氏名を自書(令和2年の法改正で財産目録については自署要件が緩和されました)し、押印したものを封印して作成する遺言です。

自筆証書遺言の特徴はご自身で全文を自筆することにあります。
公証役場に行かずに、公証人等の関与なく独りで作成できるため、最も簡易にかつ費用が安く作成できるという利点があります。

しかし、目録添付や加除修正などに関する細かいルールがありますので、実は作成時に注意が必要となります。

〇自筆証書遺言作成時の注意点
自筆証書遺言を作成する際に、最も重要な要件が「自筆で書く必要がある」ということです。
近時は、メールやSMS等によってコミュニケーションが行われることがほとんどであり、ビジネスで書面を作成するときもほとんどがパソコンです。年賀状等でメッセージを手書きする際も、長文になりませんよね。
そのため、遺言書全文という長文を自筆することはなかなか大変です。
しかしながら、現行法上、原則として全文を遺言者本人が自筆で記載し、署名押印も必要となります。

例外的に、「添付の財産目録」のみ、代筆してもらったり、パソコンで作成したり、預貯金通帳の写しや不動産全部事項証明書等の資料の添付でも代用できます。
もっとも、これらの場合には、すべてのページに遺言者本人の署名押印が必要となりますので、これを忘れないようにしてください。
また、これらの用いて作成してよい財産目録は遺言書本文に「添付」されている必要があります。つまり、遺言書本文と別の紙に記載されている必要があり、遺言書本文と同じ紙に財産目録を記載する場合には、自筆が必要となります。

本文、財産目録ともに、縦書きか横書きか、紙の大きさや質、ペンの種類等の指定はありません。
ただし、法務局で保管する場合には、以下の指定があります。
①用紙はA4サイズで記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないものであること。
②片面のみの記載であること。
③最低限、上部5ミリメートル、下部10ミリメートル、左20ミリメートル、右5ミリメートルの余白をそれぞれ確保すること。
④各ページにページ番号を記載すること(③の余白内に記載)。
⑤ホチキス等で綴じないこと。
⑥封印をしないこと。
⑦消えるインクは使用せず、ボールペンや万年筆等消えにくい筆記具を使用すること。
こちらを充たさない場合には、作成しなおしの必要があります。


全文自筆の際に忘れがちなのが、「作成日付」です。複数の遺言書がある場合、作成日付の新しいものが有効となりますので、作成日付は遺言書作成において非常に重要な事項となり、作成年月日の記載のない遺言書は、年月のみ記載して日付のない遺言書も含めて無効となります。

また、押印については、認め印でも大丈夫ですが、印影がきれいに見えないと無効とされる可能性もあります。そのため、押しやすくきれいに印影が現れる印鑑ではっきり押してください。スタンプ印は避けましょう。

加除修正のやり方も決まっていますので、注意が必要です。
・修正したい部分に二重線を引いて、吹き出しを使って新しい文字を書き入れ、署名押印するのと同じ印鑑を押す。
・欄外の部分に、どこ(何ページ目のどの部分)をどのように訂正したのか(「2字削除4字加入」のようにしても大丈夫です)、改めて自筆した上で、署名押印する。
これらの両方が必要となります。
財産目録の加除修正のやり方も同じです。
修正テープや黒塗りは認められていませんので、これらを使用して修正した場合は無効となります。

封印等は要件ではありませんので絶対に必要なものではありません。
しかしながら、改ざん等を防いだり、遺言書自体の劣化を防止するためにも封印を行った方がよいでしょう。
封印を行う際には、それが遺言書であることや家庭裁判所での検認を受けるまで開封してはいけないこと等を記載すれば、誤って開封される可能性は低くなります。
ただし、後述のように法務局で自筆証書遺言を保管してもらう際には、封印されていないことが要件ですので、逆に封印しないよう気を付けてください。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
令和2年から始まった遺言保管制度が話題に上がっていますが、そちらにばかり気がいって、そもそもの遺言作成時の注意点が見落とされがちです。せっかく作成した遺言が後々無効とされないためにも、遺言作成について是非弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士 後藤 壮一

2023年08月03日

『自筆証書遺言の保管方法について』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇自筆証書遺言
前回、「自筆証書遺言」の特徴・作成方法について、ご説明しました。(前回のコラムはこちら。)
今回は、作成した「自筆証書遺言」の保管方法について、ご説明いたします。

〇自筆証書遺言保管制度の概要
現在の自筆証書遺言の保管方法は、「法務局で保管してもらう」か「それ以外の方法で保管する」を自由に選択できます。

法務局で自筆証書遺言を保管してもらう制度は、「自筆証書遺言保管制度」といい(そのままですね。)、令和2年7月10日から始まりました。

遺言者は、①自筆証書遺言の保管の申請、②遺言書の閲覧、③遺言書の保管申請の撤回、④住所等変更の届出、を行うことができます。

相続人等は、遺言者の死後のみ、①遺言書保管事実証明書の交付請求、②遺言書情報証明書の交付請求、③遺言書の閲覧請求、を行うことができます。

〇自筆証書遺言保管制度の遺言者の利用
遺言者本人が、無封状態の遺言書原本、写真付きの本人確認書類、保管申請書等を法務局に持参する必要があります。
代理人による申請は認められませんが、付き添いは可能です。

法務局での保管を申請する際、自筆証書遺言としての方式及び法務局指定の書式を充たすか、チェックされます。したがって、少なくとも法律の定める方式違反によって無効となることはなくなります。
そのため、遺言者の死後に、後述の家庭裁判所の検認を受けることなく、遺言を執行することができます。
もっとも、あくまで形式面でのチェックにすぎず、内容が執行可能かや遺言能力が認められるかといったことまで保証されませんので、ご注意ください。

また、遺言者の希望がある場合に限られますが、法務局から遺言者指定の通知対象者1名に対して、遺言保管場所等の情報が通知されます。
通知のタイミングは、遺言者の死亡を法務局が確認できたときです。
これをしておけば、遺言書の存在を誰にも伝えていなくても、相続人等が遺言書があるかどうかわからない、といった事態を防ぐことができるかもしれません。
もっとも、法務局が遺言者の死亡を確認した後に送られるので、場合によっては死後しばらく経ってから通知がなされる場合もあるかもしれませんので、念のため遺言書の存在は相続人等に伝えておいた方がいいでしょう。

〇自筆証書遺言保管制度での相続人等の調査
遺言は法務局内でデータで管理されています。
そのため、遺言者の死後であれば、相続人等は、原本が保管されているかどうかにかかわらず、全国どこの法務局においても自筆証書遺言が存在しているかどうか確認したり、データによる遺言書の閲覧や遺言書情報証明書を取得したりできます。

そして、相続人の内の一人が遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けたりした際には、他の相続人全員に対して、その旨の通知がなされます。相続人間の情報共有が容易にできますね。


〇その他の保管方法
「自筆証書遺言」は、法務局で保管せずとも、法律上の方式を充たす限りは有効です。
したがって、自宅等で保管することも可能です。

もっとも、遺言書の存在を周知しないと、遺言書があるかどうかわからないまま、遺言の内容と異なる遺産分割協議がなされたり、相続人間で紛争が生じたりすることになりかねません。
そのため、自筆証書遺言を自宅等で作成する場合は、遺言書の存在をしかるべき人に周知しましょう。

〇自筆証書遺言の検認
自筆証書遺言保管制度を利用しない場合、自筆証書遺言を執行するためには、「検認済証明書」が必要となります。
「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

封印のある自筆証書遺言は、この検認手続き内で開封しなければいけませんので、遺言書を発見したとしても開封しないようご注意ください。

検認の申し立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して戸籍等資料を添付して行います。書式等は、家庭裁判所のホームページにありますので、ご利用ください。
その後、家庭裁判所から相続人全員に対して、検認期日の通知がなされます。検認期日には相続人全員の出席は不要ですので、出席するかどうかは各相続人の判断となります。ただし、申立人は、遺言書や印鑑その他資料を持参のうえ、期日に出席することが必須です。検認期日は、裁判所と申立人が調整して決めますので、申立人の都合の悪い日となることはほぼないでしょう。
検認期日では、申立人から遺言書を提出してもらい、出席した相続人立会いの下、裁判官が開封の上で検認します。
その後、裁判所に「検認証明書」を出してもらうよう申請して、証明書をもらえば、遺言の執行に移ることができます。

なお、検認は、あくまで遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造変造を防ぐ手続きです。遺言の有効性を保証するものではありませんので、検認を経たとしても、後々遺言が無効と判断される可能性はあります。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
令和2年から始まった自筆証書遺言保管制度によって自筆証書遺言が増加される見込みです。もっとも、本コラムでは概要を記載しているだけですので、詳細については法務局または弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士 後藤 壮一

2023年08月03日

『特別方式遺言について』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇はじめに
以前のコラムで、日本で認められている遺言には普通に生活するうえで作成する「普通方式遺言」と特殊な状況下でのみ認められる「特別方式遺言」の2種類があることを説明いたしました。(遺言の種類についてはこちら。)

今回は「特別方式遺言」を作成する要件等についてご説明します。

〇特別方式遺言の種類
「特別方式遺言」には、大きく2つに分けて「危急時遺言」「隔絶地遺言」があり、それぞれ、船舶等乗船中に作成するか、それ以外の状況で作成するか、でさらに2つに分かれます。

結果として、「特別方式遺言」には、「一般危急時遺言」「難船危急時遺言」「一般隔絶地遺言」「船舶隔絶地遺言」の4種類があることになります。


〇危急時遺言
危急時遺言には、「一般危急時遺言」「難船危急時遺言」があります。

「一般危急時遺言」は、病気やケガ、その他の理由で死亡の危急に迫った人が利用できる遺言です。
証人3名の立会いの下で、遺言内容を証人の1名に口述します。当該証人が筆記したうえで遺言者本人と他の証人2名に読み聞かせを行います。証人全員が、筆記の正確なことを確認した後、これに署名押印して作成します。
一般危急時遺言は、作成後20日以内に、家庭裁判所で確認手続きを受けて初めて有効となります。20日以内の確認手続きがない場合は、その遺言は無効となります。

「難船危急時遺言」は、船や飛行機に乗っている際遭難などの危難に遭い、死亡の危機が迫っている人が利用できる遺言です。
証人2名の立会いの下で、遺言内容を証人の1名に口述します。当該証人が筆記したうえで遺言者本人と他の証人に読み聞かせを行います。証人全員が、筆記の正確なことを承認した後、これに署名押印して作成します。
証人は、当該遭難が止んだ後で記憶に基づいて筆記し、署名押印することも認められています。
難船危急時遺言も家庭裁判所での確認手続きが必要ですが、一般危急時遺言と異なり期限は設定されていません。もっとも、当該遭難が止んだ後、遅滞なく確認手続きを申し立てる必要があります。

〇隔絶地遺言
「隔絶地遺言」には、「一般隔絶地遺言」「船舶隔絶地遺言」があります。

「一般隔絶地遺言」は、伝染病等なんらかの行政処分によって交通を断たれた場所にいる場合に認められる遺言です。
警察官1名と証人1名の立会いの下、遺言者本人が遺言書を作成し、警察官と証人の署名押印をもって完成されます。危急時遺言と異なり代筆はできません。
本人が作成しているため、家庭裁判所での確認手続きは不要です。

「船舶隔絶地遺言」は、船舶の中にいる人が利用できる遺言です。
船長もしくは事務員1名と証人2名以上の立会いの下、遺言者本人が遺言書を作成し、遺言者と立会人全員の署名押印が必要です。
本人が作成しているため家庭裁判所での確認手続きは不要ですが、遺言者が普通方式遺言を作成することができるようになってから6か月間生存したとき、船舶隔絶地遺言は効力を失います。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
思いがけず死の危機に直面した場合でも自身の最期の意思を残す方法がある、ということは覚えていても損はないかもしれません。
もっとも、そのような状況下で作成するよりも、事前に財産や相続人の調査を行い、遺言内容をじっくり考えたうえで作成する遺言の方が安心ですよね。(公正証書遺言の作成方法についてはこちら。自筆証書遺言の作成方法についてはこちら。)

弁護士 後藤 壮一

2023年08月04日

Navigating Traffic Accidents in Japan: Legal Considerations (Part 1 – An Overview)

As a foreign resident in Japan, understanding the legal implications of a traffic accident is crucial. In this post, we’ll provide essential information. Please note that consulting a legal professional is advisable for personalized advice.

1. Duty to Report

• Duty to Report: Under Article 72.1 of the Road Traffic Act, drivers involved in an accident must stop driving immediately and report the incident to the police, i.e., to provide accurate information about the accident, injuries, and property damage. Failure to do so can be legally consequential.Leaving the scene without reporting is a criminal offense (Hit-and-run). Penalties include fines, imprisonment, or both, and may even result in theloss of resident status (visa revocation).

• Further steps: An exchange of personal and insurance information with the other driver is necessary. Documenting the scene, taking photos and gathering witness details is advisable in some cases. Having a vehicle drive recorder can be immensely helpful.

2. Liability and Compensation

• Civil Liability: Japan follows a fault-based system. The driver at fault (or their insurance company) is liable for damages.

• Insurance: Ensure that your car insurance is valid. Japan mandates compulsory automobile liability insurance (“CALI” or Jibaiseki Hoken), which covers personal injury involving your vehicle regardless of who is driving. However, CALI only covers minimal damages, and what CALI does not cover, the driver at fault is personally liable for. We strongly recommend supplemental private insurance.

*When obtaining private insurance, we recommend adding a premium for legal fees coverage (Bengoshi Hiyō Tokuyaku). This will help cover most or all legal fees if you are the victim in a traffic accident.

• Compensation: Seek compensation for property damage, injuries, medical expenses, loss of income, etc. (details in Part 2). Consult a legal professional to understand your rights. Insurance companies and legal precedents often have intricate rules and customs that may be unfamiliar, whether you’re a foreign resident or a Japanese citizen. Even the frequency of doctor visits after an injury can impact your final compensation. Early legal advice is crucial if you’re a victim in a traffic accident.

Understanding your rights and responsibilities will help you navigate the complexities of being involved in an accident in Japan. Traffic accidents are among our primary focuses. Over the years, we’ve handled hundreds of cases, including those from clients residing in remote areas. If you’d like to explore your options, please don’t hesitate to schedule a consultation with us.

Akemi Terano, Attorney at Law

➡ (Part 2 – Compensation)

2024年09月24日

Navigating Traffic Accidents in Japan: Legal Considerations (Part 2 – Compensation)

In our last post, we provided basic information regarding how to navigate through the process of being involved in a traffic accident in Japan. In this post, we’ll focus on traffic accident victims—the rights you have as a victim and ways to protectyourself.

1. What You Can Claim

Consider the following key points making you eligible for compensation:

• Property Damage: Reasonable repair expenses are compensated. Additionally, in some cases, damages related to personal items such as clothes, bags and cell phone can also be covered.

• Psychological Damage: Compensation for psychological damage (called Isharyō) is money intended to address physical and emotional suffering resulting from a traffic accident injury. The compensation amount depends on the type and duration of the injury and frequency of treatment.

Important note: Medical records play a crucial role in proving suffering. Seeking prompt medical attention and adhering to treatment recommendations are essential. Not doing so can significantly reduce compensation. We strongly recommend seeking legal advice immediately after an accident so that you are adequately informed about risks while in treatment.

• Treatment Expenses: This includes medical bills, hospitalization costs, transportation expenses and related fees.

• Lost Income: compensation for lost income is available if work is missed. In some cases, a doctor’s note may be required.

• Residual Disability: After completing necessary treatments, individuals who continue to suffer from the injury can apply for recognition of residual disability (Kōi Shōgai). There are 14 degrees of disability (with one degree being the most severe). The compensation for future damages varies based on the degree of recognition.

For our clients, we not only handle the application process but also strive for optimal results. For instance, we prepare customized request letters to doctors for their note (official Doctor’s Note) on the residual disability, ensuring they focus on relevant symptoms, necessary tests and results. You might assume doctors know about such things, but while they excel at patient care, many are unaware of what residual disability recognition entails.

2. Understanding Percentage of Negligence

When a traffic accident occurs in Japan, determining fault isn’t always straightforward. Often, both parties—the victim and the at-fault driver—may share some degree of responsibility. In such cases, the concept of “Percentage of Negligence” (Kashitsu Wariai) comes into play. Here’s how it works:

• Definition: The “Percentage of Negligence” represents the proportion of responsibility for an accident. It determines how compensation is distributed between victims and at-fault parties. If you bear some degreeof responsibility in an accident even though you are, in a general sense, the victim, your compensation may be reduced based on your own percentage of negligence. In some cases, you might even be required to pay for damages caused to the other party (such as the repair fee of their car).

• Standard Reference: In most cases, designation of negligence percentages follows an official standard based on legal precedents. Factors considered include the accident site (e.g., intersection, intersection without traffic lights, arterial road with pedestrian crossing), the type of vehicles involved (e.g., car vs. car, car vs. bicycle, car vs.pedestrian), and the nature of the collision (e.g., right-turn accident, disregard of a traffic light, rear-end collision).

• Examples: For example, if there is an accident at an intersection with no traffic light but with a stop sign on one side: If it’s a car vs. car collision (neither car stopped at the intersection), the standard negligence percentage will be 80% for the car with the stop sign and 20% for the car without the stop sign. The driver on the side with no stop sign might find it unreasonable to be considered responsible for 20% of the accident, but this is the established framework.

In the same accident, however, if it is a car vs. bicycle collision, and the bicycle side has the stop sign, the negligence percentage becomes 60% for the car and 40% for the bicycle. Despite the fact that the cyclist wasthe one who should have followed the stop sign before entering theintersection, they bear less negligence simply because they were on a bicycle.

Please note that other factors may change the percentage of negligence, so consulting a professional is recommended. Some accidents simply do not fall into any regular legal category in which case, the percentage will be determined by negotiation or court decision.

3. Legal process

• Negotiation: Most traffic accidents are settled by negotiation. This is because there are accumulated legal precedents that make it easy to anticipate the court’s decision if the case goes to trial. So, both parties are usually willing to settle for a little less than the expected amount of a court ruling to avoid the trouble of going through the process of a trial.

However, insurance companies often offer significantly less to those negotiating without legal representation. If you receive a settlement offer from the insurance company, consider consulting with a lawyer before finalizing it.

• Lawsuits: In some cases, such as when the injury is so severe that the compensation demanded is high, settlement through negotiation becomes difficult. Victims can then file a lawsuit against the responsible party. Keep in mind that lawsuits typically take at least a year to resolve.

Remember that you have rights as a victim. Consulting a professional to guide you through the legal process is key.

Our firm handles traffic accident cases from clients across Japan. We offer online consultations, communicating via email and phone. Experiencing an accident in a foreign country can be particularly traumatic. Our goal is to provide you with legal guidance every step of the way.

Akemi Terano, Attorney at Law

➡ (Part 1 – An Overview)

2024年09月24日

If a Foreign Resident is Arrested in Japan (Part 1 – Pre-prosecution Stage)

Japan is home to an estimated two million foreign residents with mid- to longterm visas. Many of them have established lives here, including jobs, friends and family. When a foreign resident faces arrest, the implications extend beyond the immediate criminal proceedings—they can also impact visa status.

Navigating a legal system that may be very different from what one is accustomed to can be challenging, especially when coupled with a language barrier. In this post, we'll explain how police investigation during the pre-prosecution stage works and the importance of avoiding prosecution.

➡ (Part 2 – Post-prosecution Stage)

1. Before Arrest

• Police investigation: During a criminal investigation, the police often reach out to suspects for voluntary interviews. While participation is not obligatory, it is generally advisable to comply politely rather than reject outright. Caution is required when dealing with such requests, as in some cases, rejection can prompt the police to proceed with an arrest.

Negotiating the timing of such interviews is possible, so it is crucial to promptly seek legal consultation before the interview to receive guidance on handling the process. Additionally, requesting an interpreter for the interview is essential.

Although lawyers cannot be physically present during police interviews (a notable difference that can baffle foreign residents accustomed to the idea of having legal representation during interactions with law enforcement), seeking legal advice is vital during this phase of investigation. In fact, it is the most critical time to obtain proper guidance and ensure awareness of relevant laws and customs.

• Written Statement: At the conclusion of a police or prosecutor interview, individuals may be asked to sign a written statement. While it is acceptable to do so, exercising extreme caution is crucial to ensure that the statement accurately reflects the explanation given to law enforcement. If any errors or omissions exist—even minor ones—individuals have the right to request amendments before signing.

2. From Arrest to Detention

• Overview: A suspect can be arrested if there is probable cause to suspect their involvement in a crime. In relatively minor crimes, investigations may continue without an arrest. However, in other situations, arrest becomes unavoidable.

Upon arrest, the police have 48 hours to conduct initial investigations before forwarding the case to a designated prosecutor’s office. The prosecutor then has 24 hours to file for detention. A judge assesses the necessity of detention. If the alleged crime is relatively minor or lacks strong grounds, the prosecutor may choose not to detain the suspect, allowing continued investigation without confinement.

• Communication Options

(a) Embassy or Consulate Notification: Foreign suspects are asked whether they want their country’s Embassy or Consulate to be informed. While the level of assistance varies by country, diplomatic missions cannot represent individuals in criminal defense.

Often, individuals arrested while just traveling in Japan use their Embassy to contact family members back home, leading concerned family members to seek our firm’s assistance in visiting them in jail.

(b) Legal Representation: The only external contact permitted during this stage is with lawyers. If you know a lawyer, you can request that the police contact them on your behalf. Alternatively, you can ask for a “Duty Attorney” (Tōban Bengoshi), who will provide a free initial consultation.

3. Detention

• Process and Duration: Once the prosecutor seeks detention, there is a high likelihood that the judge will grant it (over 95%). Detention can last up to 20 days per charge for most crimes (meaning that if there are multiple charges, the detention period can be longer). During detention, daily interviews occur with police and prosecutors. Simultaneously, investigative efforts intensify, as prosecutors must decide whether to proceed with prosecution or release the suspect within the 20-day window. Notably, bail is unavailable during the pre-prosecution period.

The impact of being held in detention for 20 days can be significant—professionally and personally—even if ultimately, they emerge without facing prosecution. We strongly recommend consulting a lawyer to receive proper legal advice from the onset.

• Visits: During detention, it is possible for someone other than attorneys to visit the detainee. However, certain restrictions apply, such as the presence of a police officer who understands the language used during visits. Therefore, it is necessary to contact the police station where the detainee is being held in advance.

In some cases involving possible accomplices or additional offenses, a nocontact order may be issued, prohibiting visitors and all outside communication except with attorneys during detention.

• Attorney Representation: The Duty Attorney mentioned above is only for the first meeting during arrest. Subsequent decisions regarding legal representation must be made. If financial resources are limited, individuals in detention qualify for a pre-prosecution public defender, with the government covering attorney fees (with some exceptions).

However, using a public defender has drawbacks for foreign suspects. For example, individuals cannot select their preferred lawyer, and most public defenders only speak Japanese. Consequently, interpreters are necessary during meetings with the attorney, which can lead to less frequent visits due to scheduling challenges. Additionally, communication involving interpretation typically takes twice as long, resulting in significantly less direct interaction with the attorney. And, unfortunately, we often hear that the quality of interpretation is inadequate.

Furthermore, when a foreign resident is involved in a crime, the evidence is typically in mother-tongue. Even when evidence could prove innocence or mitigate charges, assessing its content may require translation which takes time.

At our law firm, we have an attorney who is fluent in English. This allows us to communicate directly with our English-speaking clients without an interpreter. When clients provide evidence (such as emails) in English that could benefit their case, we can thoroughly review it, treating it like any other evidence.

Japan’s conviction rate exceeds 99%, making the pre-prosecution phase critical in criminal defense. The objective during this phase is to persuade prosecutors to drop charges. Attorneys can gather and assess evidence, negotiate with victims for settlements, talk to family or friends to secure a personal guarantor (see Part 2 for details), etc.

In contrast to civil cases, most criminal cases require attorneys to be geographically close so they can see the accused individuals where they are detained. Therefore, it is advisable to contact a lawyer in your area for assistance.

➡ (Part 2 – Post-prosecution Stage)

2024年10月08日

If a Foreign Resident is Arrested in Japan (Part 2 – Post-prosecution Stage)

During the post-prosecution stage, the defense attorney’s focus shifts to trial preparation. This involves gathering additional evidence, preparing witnesses, and more. Given the fact that Japan’s conviction rate exceeds 99%, the primary objective often becomes securing a reduced sentence and a suspension on the sentence (avoiding prison time).

➡ (Part 1 – Pre-prosecution Stage)

1. Detention and Bail

•Overview: Detention may continue, post-prosecution. However, bail becomes a viable option at this stage. If bail is not granted, detention may continue until the trial concludes.

To secure bail, the accused must demonstrate the following:
(1) Resident stability: Proof of a stable residence.
(2) Non-interference with evidence: Assurance that they will not conceal or destroy evidence, including refraining from contacting the victim or witness to threaten or intimidate.
(3) Flight risk mitigation: This is particularly challenging for foreign residents, as the court may suspect they will leave the country if released. Demonstrating a stable life in Japan and getting a personal guarantor are imperative.

•Personal guarantor: Personal guarantor (Mimoto Hoshōnin) is a trusted individual, often a family member or employer, who acts as a guarantor during the bail process. This person vouches for the accused individual’s reliability and may also serve as character witness during the trial.

•Bail Money: Bail money is required in all cases, typically ranging from 1.5 million to 2 million yen (higher in certain cases). For individuals lacking sufficient funds, borrowing from the Japan Bail Support Association is an option, though a guarantor (in this case, someone legally responsibility for repaying the bail money if conditions are breached) is necessary.

•Passport: To demonstrate a foreign resident is not a flight risk, the defense attorney may retain the individual’s passport and provide a statement to the court ensuring this.

2. Trial Preparation

•Evidence: Attorneys collect relevant documents, police reports and other materials related to the case. Interviews with potential witnesses are conducted. They scrutinize the evidence presented by the prosecution, assessing its strength, relevance and potential weaknesses.

•Strategy Formulation: Understanding the accused’s version of events is crucial. Attorneys listen to their account and identify relevant details. Based on the evidence and client input, attorneys develop a defense strategy. This may involve challenging specific elements of the case or seeking alternative resolutions. On a side note, attorneys gain access to evidence gathered by law enforcement only after the prosecution.

•Settlement with victims: When there is a victim involved, reaching a settlement can impact sentencing. Attorneys instruct the accused on writing an apology letter and engage with victims carefully for negotiation.

3. Trial

•Overview: In most cases where the accused is pleading guilty, the trial involves two to three court dates over a period of two to three months. In some cases, especially if the accused is pleading not guilty, the trial can extend much longer, sometimes up to a year or more.

During bail, attendance at court dates is mandatory. Breaching this condition can result in immediate cancellation of bail.

•Interpretation checker: When the accused is a foreign resident, a courtappointed interpreter will be present during the trial. However, sometimes their interpretation may not be accurate, potentially leading to misunderstandings of the accused’s statements in court. In our law firm, we have a lawyer fluent in English who can also serve as interpretation checker during the trial.

•Jury trial: In Japan, certain criminal cases are subject to jury trials (Saibanin Saiban), where both judges and juries (citizens) participate in the decisionmaking process. Examples of such crimes include arson of an inhabited building, counterfeiting and use of counterfeited currency, non-consensual indecent acts or sexual intercourse causing injury or death, murder, kidnapping for ransom, robbery causing injury or death, and the import, export or manufacture of methamphetamine for profit.

Jury trials usually take much longer, the average preparation period being eight months and more than five trial dates.

4. Punishment

•Overview: In most cases, the punishment is imprisonment with work, sometimes accompanied by fines. The key considerations are whether the sentence is suspended and, in case of some foreign residents, the length of the sentence itself.

•Suspended sentence: A suspended sentence allows the individual found guilty to avoid imprisonment, provided they comply with certain conditions during a probationary period. There is also a partially suspended sentence in some cases.

•Impact on visa: Being convicted of a crime can result in immediate deportation.

For instance, a foreign resident of any visa status who has been convicted of a crime and received a sentence longer than one year of imprisonment without a suspended sentence will face immediate deportation. A foreign resident with a status of the Appended Table I of the Immigration Control and Refugee Recognition Act (typically a person with a visa other than spousal or permanent residency) who has been convicted of a crime and received a sentence with imprisonment (regardless of the length and suspension of the sentence) for crimes such as breaking and entering, assault, theft, burglary, fraud, extortion, dangerous driving causing death or serious bodily injury, and others will also face immediate deportation.

A foreign resident of any visa status who is convicted of a drug-related crime (regardless of the severity of the sentence) will face immediate deportation as well. Japan is strict on drug-related crimes, including marijuana. Be aware that if you “slip in” some marijuana while traveling overseas and bring it back to Japan, or if your friends overseas send you marijuana as a joke, you can face serious consequences.

Even if immediate deportation is avoided, having a criminal record can affect the renewal of one’s visa. The above are only partial and simplified examples. There are many intricate rules regarding this matter, so consult a professional if you have concerns.

Japan’s criminal system and its customs are very different from what most foreign residents are familiar with. Long detention without bail can result in job loss, and the outcome of a case can negatively impact future visa status. Seeking immediate professional guidance is strongly advised for any foreign resident under criminal procedure.

➡ (Part 1 – Pre-prosecution Stage)

2024年10月08日