『公正証書遺言の周知方法・調査方法について』

こんにちは。弁護士の後藤壮一です。

〇はじめに
前回、「公正証書遺言」の作成方法について、ご説明しました(前回のコラムはこちら)。
今回は、「公正証書遺言」の周知方法・調査方法について、ご説明いたします。

〇遺言者による公正証書遺言の周知方法
公正証書遺言はその内容や効力が争われにくく、死後の遺族の紛争の防止に役立ちます。そのため、「終活」においては、公正証書遺言の作成はとても重要な活動になります。

しかし、せっかく作成した公正証書遺言も遺族に見てもらわない限りは意味がありません。
したがって、公正証書遺言を作成した場合には、しかるべき人に「〇〇の公証役場に公正証書遺言がある。」ということはしっかり伝えてください。遺言の内容を実現する「遺言執行者」を指名した場合には当該遺言執行者であったり、遺贈の相手方や相続人全員に伝えるのが望ましいですね。

また、公正証書遺言があることを伝えたとしても、「遺言者の生存中に公正証書遺言の内容を確認できるのは遺言者のみ」という決まりがあります。そのため、公正証書遺言の存在を伝えたとしても、遺言者の生存中は原則として遺言の内容を知られることはありませんので、ご安心ください。

内容を知られてもよい人には、公正証書遺言の謄本を預けることも有効です。そうすることで、公証役場の場所や作成日等を把握してもらいやすくなります。


〇相続人等による公正証書遺言の調査方法
逆に、被相続人が公正証書遺言を残しているかどうか、相続人等が調査するためには、2つの方法があります。

まずは、被相続人のご自宅等で公正証書遺言の正本や謄本を探す方法です。公正証書遺言は、作成時に正本と謄本が1通ずつ遺言者に渡されますので、当該正本または謄本を遺言者が保管している可能性あります。

2つめは、公証役場にある「遺言検索システム」を利用する方法です。
「遺言検索システム」を利用すれば、公正証書遺言の有無や、公正証書遺言がある場合には、「作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等」がわかります。

「遺言検索システム」は全国規模で公正証書遺言を管理していますので、どこの公証役場で検索しても、全国どこの公証役場に公正証書遺言があるかどうかがわかります。ただし、昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言のみが検索対象なので、それ以前に公正証書遺言を作成していた場合には、検索できないこともあります。

遺言検索システムを利用するためには、以下の資料を持参して、公証役場に行きます。
・被相続人の死亡記載のある資料(除籍謄本や住民票の除票等)
・「法律上の利害関係」があることを証明する資料(相続人であることがわかる戸籍謄本や)
・請求人の本人確認資料
・(代理人による請求の場合)委任状と印鑑証明書
なお、遺言検索システムの利用料は現在のところ無料とされています。

もっとも、遺言検索システムでは、公正証書遺言の有無と保管されている場所としかわかりません。公正証書遺言の内容を確認するためには、原則として作成した公証役場にて閲覧・謄写の手続きが必要となります。
ある程度公正証書遺言が保管されている場所の目途が立っている場合、当該公証役場で検索し、当該公証役場に保管されていればその場で謄写等の請求もできます。
ただし、平成31年4月1日からは、遠隔地の公証役場が保管する遺言の正本謄本を郵送で取得することができるようになりました。公正証書遺言が作成された公証役場が遠隔地の場合は、最寄りの公証役場で郵送のお手続きしてください。

このように、相続人等による調査もできますが、やはり公正証書遺言が保管されている公証役場をあらかじめ伝えておくことで、遺族の手間が大いに省かれます。

〇まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、「公正証書遺言」の周知方法・調査方法についてご説明いたしました。
遺言は、被相続人の意思を残す重要な手段です。被相続人が生前にしっかり周知するか、相続人がしっかり調査して、相続人が内容を知れるようにしましょう。

弁護士 後藤 壮一

2023年08月02日